2020年の東京オリンピック・パラリンピックを、世界の人々にどう印象づけるのか。日本の最先端の科学技術を使って「未来のスポーツ」を生みだそうという試みが始まっています。
目指すのは、スポーツと科学技術の融合。バーチャルリアリティ(仮想現実)や人工知能など、これまでスポーツと縁遠かった専門家たちが、立ち上がりました。
技術の力でスポーツにどのような新しい楽しみが広がるのか。
ネット報道部の梅本一成記者が取材しました。
東京五輪で描くスポーツの未来
東京がオリンピックとパラリンピックの開催地に決まった3年前の国際オリンピック委員会の総会。滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」のスピーチとともに、世界中の人々の心を捉えたプレゼンテーションがありました。
日本の最先端のテクノロジーを使った「未来のスポーツ」をイメージした映像です。速すぎて人の目では捉えられないフェンシングの剣先の動きを「モーションキャプチャ」とCG合成の技術で可視化。剣先が体に当たった時には、技とポイントが同時に画面に表示されるなど、まるでテレビゲームのような感覚で観戦できるイメージ映像でした。
2020年の東京オリンピックは、これまでと全く違ったスポーツの祭典になるかもしれない。世界中のスポーツファンが大きな期待を寄せています。
デジタル技術で“ハンデ”が消える!?
そうした世界の人々の期待感を現実のものにしたいと、日本のバーチャルリアリティや人工知能、ロボットなどの専門家たちがさまざまな研究・開発を進めています。
オリンピックでの正式な競技種目とは別に、未来のスポーツを集めた国際大会を開くのが目標です。
先月は、このうち、電気通信大学のグループが開発を進めている未来のバスケットボールの実験が東京で行われました。
考案したのは大学院博士前期課程2年の遠藤直樹さん。ねらいはバスケットボールの選手間の身長の差のハンデをなくして、誰でも楽しめる競技にしようというものです。
実験では、ボールを持つ人の動きに合わせて、その人の周囲にスポットライトが当たったように半径1メートルほどの円形のゾーンが照らし出され、選手が移動するとゾーンも一緒に動くようにしました。ゾーンの中にはボールを持つ人より、身長が高いディフェンスの選手は入れないというルール設定で、このゾーンの中に入ると、その選手の周りが赤く光ったり、警告音が鳴ったりします。背が高い選手に侵入禁止ゾーンを設けることで、背の低い選手のパスやシュートが邪魔されにくくなります。
この実験で、招致活動のフェンシングの映像と同じ「モーションキャプチャ」の技術を使った「キネクト」と呼ばれるセンサーが応用されました。キネクトは、テレビゲームでコントローラーを使わずに、体を使ってより直感的にキャラクターを操作するために開発されたもので、内蔵されたカメラが人の動きを捉え、キャラクターの動きと連動させます。
実験では、コート全体を見渡せる位置にキネクトを設置。カメラが選手の位置や動き、身長などを計測し、そのデータに基づいて、キネクトと連動させたプロジェクターが、侵入禁止ゾーンの映像をリアルタイムで映し出すシステムを作りました。
“技”を“コピー”する!?
フェンシングなどの格闘技だけでなく、多くのスポーツでは、上達するためには、高度な“技”が欠かせません。そうした技を身につけるためには通常、選手たちはコーチや、うまい選手などのフォームなどを見て試行錯誤を重ね、長い時間をかけて、ようやくまねすることができるようになります。
ところが、ロボットと人工知能の技術を応用することで、効率的に技を体得できるようになるのを目指す画期的な技術の研究が進んでいます。
取り組んでいるのは、人工知能を使ったロボット制御を研究テーマにしている横浜国立大学大学院の島圭介准教授と県立広島大学の島谷康司准教授のグループです。
動画は右側に座った人の手の動きを、左側の人が自動的に”まねる”実験です。
左側の人は目隠しをしていますが、右側の人が手を曲げた直後に、ほぼ同じように手を曲げる動作を行います。まるで動きが伝わったようです。筋肉は脳からの指令を受けて神経を流れる電気信号によって制御されています。この電気信号は、皮膚に貼り付けた電極で読み取ることができます。
また外から電気信号を伝えることで、脳からの指令がなくても筋肉を動かすこともできます。こうした仕組みを利用して右側の人の電気信号をコンピューターで読み取り、左側の人に伝えているのです。これを可能にしているのが島准教授らが独自に開発した人工知能のプログラムです。
どういった動作の時にどのような電気信号が流れるのかは、無限と言えるほどのパターンがあり、人それぞれの筋肉の太さや力の強さによっても違ってきます。
人工知能には、まねられる人(A)とまねる人(B)の筋肉の収縮やタイミング、力の強さなどに応じた電気信号のパターンをあらかじめ学習させておきます。そうすることで、まねられる人の電気信号(A)を解析して、まねる人が同じ動作をするような電気信号(B)に自動的に調整して伝えることができるのです。
私も右腕に電極をつけて研究室の学生の手首の動きを再現する実験を体験しました。学生が手首を上に曲げると、私の手首は無意識のうちに学生の動きをまねたように上に曲がり、学生が手首を下に曲げると私の手首も下に曲がりました。力を入れれば、自分の意志で動きを止めることもできました。実験の最中は筋肉が小刻みに震え、びりびりとした刺激を感じました。実験後には運動したあとと同じように筋肉が疲れたようなだるさも感じました。
電気信号を伝えて動きを再現することが確認できたのは、今のところ、ものを握ってつかんだり、離したり、別の場所に移動させたりといった簡単な動作に限られています。島准教授たちは今後、ダイナミックな動きや繊細な動きでも再現できるのかや、電極を取り外したあとにどのような効果が残るのかなど、検証を進めていくとしています。
島准教授は「将来的には“技”をアーカイブすることも可能だと思います。例えば、技のカタログ本やデータ集のようなものができて、データをダウンロードすることで効率的に技が習得できるようになるかも知れません」と話しています。
試合を“体感”テレビ観戦に革命
スポーツのテレビ観戦をもっともっと楽しいものにしようという技術の開発も進んでいます。
例えばサッカー観戦では、まるで自分が試合に参加しているように、グラウンドの選手の目線から見ることができたり、ゴールシーンを拡大して自由な視点から見るといったことができるようになる技術です。
「自由視点3次元映像」と呼ばれ、筑波大学計算科学研究センターの北原格准教授らの研究グループが開発を進めています。
この映像は実際におととし、カシマサッカースタジアムで行われた中学生世代のサッカーの大会を撮影して自由視点3次元映像の技術で処理したものです。映像では選手がボレーシュートを打つシーンを拡大したり、回転させたりしていますが、実際にはテレビの視聴者がテレビのコントローラーなどを使ってリアルタイムで自由に行うことができます。さらにタッチパネル式のテレビやパソコン、スマートフォンで映像を表示すれば、簡単なタッチ操作で映像を操作できます。
この日は、観客席に設置したデジタル一眼レフカメラ10台でハイビジョン動画を撮影し、3次元映像に変換しました。
この技術はもともと、SFアクション映画「マトリックス」で主人公が銃弾をのけぞってかわすシーンで使われ、一躍注目を集めました。映画では近距離で人物を撮影していましたが、サッカーのように広い空間では何十台ものカメラで撮影しなければならず、さらに膨大な映像のデータをリアルタイムで3次元映像に変換するのにも、処理能力の高いコンピューターが必要です。
北原准教授は、「画像処理の技術はここ数年、急速に進歩しており、東京オリンピックまでにはテレビ中継のデモンストレーションができるようにしたい」と話しています。
取材を終えて
「未来のスポーツ」の開発に取り組んでいる専門家の多くは、障害で失った体の機能をテクノロジーによって取り戻したり、補ったりする、いわば「人を支援する研究」に携わってきた人たちです。それだけに開発の根底には年齢や性別、障害の有無などに関係なく、誰もが一緒に楽しめる新たなスポーツを生み出そうという強い思いが感じられました。
今はオリンピックとパラリンピックが別々に開催されていますが、もしかしたら将来、科学技術の力で、障害のある人もない人も同じ舞台で一緒に競い合えるようになるかもしれない。そうすれば、スポーツはもっと自由に、そしてもっともっと楽しく、おもしろいものになるに違いないと感じました。
私は、この記事を読んで少し考えさせられてしまいました。
フェンシングの剣先の動きを可視化したり、自分が試合に参加しているように、グラウンドの選手の目線から見ることがでる技術は、競技を見てる人にとって今までと違う視点から見れるので面白いかもしれません。しかし、ハンデを無くしたバスケットや人の技術をまねる事の出来る技術。意見が、かなり分かれるかなと思いました!
ハンデを無くしたバスケットボール!今回は身長差を上げてますが、身長差だけがハンデではないと思うんですよね!
スポーツやってる人なら一度は思った事があると思います。「あいつズルいよ」って気持ちに。それって何かしらのハンデを感じたからではないでしょうか?
そう言った気持ちにならなく、誰もが納得するハンデなしのルールを作り、皆が楽しくやれて、見てる人も楽しめる物を作ると言うのは、もの凄く大変な事だと思いました。
それを考えると実現は厳しいのかな?と思ったのが素直な気持ちです。
そして次に、人の技術をものまねする技術。この技術こそ意見が分かれると思います。
「多くのスポーツでは、上達するためには、高度な“技”が欠かせません、こうした技を身につけるためには通常、選手たちはコーチや、うまい選手などのフォームなどを見て試行錯誤を重ね、長い時間をかけて、ようやくまねすることができるようになります。」
と書いてあるように、スポーツは憧れの選手みたいになりたくて、その為に必死に努力をするものだと思います。
必死に努力をして、結果が憧れの選手と同じになれなくても、努力したからこその選手の形が出来て、新たなスターが生まれると思うんですよね!
上手くなる為のヒントを簡単にもらえるのは嬉しいですが、スポーツの面白は、人のものまねをして、その技術を完全に身に着ける事じゃないと思うんですよね。
技術の発展は素晴らしい事だと思いますが、何でもかんでも人口知能やらロボットの導入などしてしまうのは、何か大切な物もなくしてしまう気がしました!
皆さんは、どう思いますか?
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