2020年東京オリンピックの追加種目候補

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9月28日、2020年東京五輪組織委員会の理事会で、9月末に国際オリンピック委員会(IOC)に提出する追加種目を決定した。

その結果、野球・ソフトボール、空手、ローラースポーツのスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目を推薦することになった。候補として残っていたのは8競技。そのうち、ボウリング、スカッシュ、武術が落選となったが、追加種目の提案が可能となった頃に考えられていた当初の数から考えると、かなり多めに選んだことになる。今回の経緯の中で、野球・ソフトボール、次いで空手が有力とされていた。野球・ソフトボールは日本で根強い支持があるとされ、空手は普及度と日本のメダル獲得可能性で強みがあると考えられていたからだ。この2競技に加え、3つの競技が加わったのは、今日のオリンピック改革への流れがある。
3競技を選ぶ根拠となったそれぞれの競技への評価に、それが如実に表れている。

若者のスポーツ離れに対する危機感が。

スケートボードの場合、ストリートスポーツを代表する競技であり、若者へのアピールと人気面で大きな期待ができること。スポーツクライミングは、アウトドアブームにおける代表的存在であること。そしてサーフィンは、マリンスポーツを代表し、若者のライフスタイルに対して大きな影響を与え、トップ選手は流行を生み出す存在として若者の絶対的支持を得ていること。つまりは若い世代へのアピール力を持つ競技を選んだということだ。そもそも今回の最終選考にあたって、組織委員会が示していた要素としては、若者へのアピール、国民機運の向上、さらに公正で開かれた選考プロセスがあった。このうち、若者へのアピールという要素は、国際オリンピック委員会(IOC)の意思の反映である。そこには、オリンピックの存在への危機感がある。

新競技も若者を取り込む施策の一環。

話は2009年にさかのぼる。この年、IOCをはじめ国際競技連盟などスポーツ関係者がオリンピックの将来を考える「オリンピックコングレス」が15年ぶりに開催された。この会議で重要な議題となったのは若者のスポーツ離れだった。そのときの議論では、各種調査で浮上した若い世代のスポーツへの関心の低下が語られ、さらに、体を動かすこと自体、意欲が失われつつあることが指摘された。その原因としてあげられたのは、テレビやゲームの普及などであった。その分析が正しいかどうかはともかく、スポーツから遠ざかる若者の姿がデータとともに語られた。そして、いかにして彼らをスポーツにつなぎとめるかが課題となった。スポーツ離れが続けば、ひいてはオリンピック自体も先細りしかねない。先々を見据えて対策は講じられた。2010年から、14~18歳を対象とした「ユースオリンピック」が始まり、競技のみならず開催期間中に教育的なプログラムを設けたのはその1つだ。また、2014年のソチ五輪で増えた種目の中心にスノーボードがあったし、2018年の平昌五輪ではさらにビッグエアが加わるのも、若い世代の目をオリンピックに向けさせる、オリンピックに引き込む狙いにほかならない。そうした背景があり、IOCの意思を汲んで、今回の追加種目は決定した。

人数に上限があるので、野球は6カ国に。

ただそれがために、混乱が生じている感があるのは否めない。追加種目における参加人数の上限は決められている。5競技としたことから、野球・ソフトボールは6カ国に減らすことになった。各大陸から出場する余地を残して割り振りを考えれば、野球の強豪国がそろう地域からの参加がかなり限られることになるし、6カ国で世界一を争うのは寂しさもつきまとうだろう。実際、野球側には不満があると聞く。スケートボードの場合、本来はローラースポーツとして種目を提案していたが、当初提案していた種目とは異なる種目での提案となった。既存の五輪競技団体の関係者からも、戸惑いの声を聞いた。そこにあったのは、外的要因に振り回されている(IOCの意思に配慮しすぎている)のではないか、幅を広げすぎることで大会全体のカラーが分かりにくくなるのではないか、これまで容易に枠が広がらなかったのを考え合わせても、オリンピックはどのような大会なのか、ぼんやりしてしまうのではないかという実感だった。それが一人や二人の声ではないことからすると、現場と運営の間に距離があることを強く感じさせる。そうした批判的な見方にも妥当性はある。

採用されてからこそが、競技の正念場だ。

一方で、既存の枠をただ守るだけでよいのか、門戸を開かないことに問題はないのか、という見方も成り立つ。まだ5競技が正式に採用されたわけではないが、否定的な視線、批判的な意見を覆すには、採用されたあとの競技側の踏ん張りが重要なポイントとなってくる。長野五輪で採用されたスノーボードが、時間をかけて冬季オリンピックで一定の地位を占めるに至ったように。そういう意味では、採用されたあとが、各競技のほんとうの勝負となる。冷めた眼差しを覆すための時間となる。

2016年8月に開く総会で追加種目を正式決定されるみたいです。

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